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特集 Onco-Cardiology—がんと循環器における新しい関係
腫瘍循環器(Onco-Cardiology)とは
Onco-Cardiology:Concept and Practice
南 学
1
Manabu Minami
1
1京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター早期臨床試験部
1Department of Clinical Innovative Medicine, Institute for Advancement of Clinical and Translational Science, Kyoto University Hospital
pp.841-847
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206023
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はじめに
人口の高齢化を背景にがん患者が増加を続ける一方で,化学療法を中心としたがん治療の進歩は,寛解率や治癒率向上に大きく寄与している.化学療法と循環器疾患とのかかわりでは,古くからアントラサイクリン系薬剤の心毒性が有名であるが,近年,様々な分子標的薬による心血管系合併症が大きな問題となっている.循環器系副作用はそれ自体が時として致死的であり,これら副作用による治療の中断は,がん患者の予後やQOLの著しい低下をもたらす.心血管疾患の既往が抗がん薬による循環器系副作用の要因となる一方で,がんやがん治療の既往が,晩発性に循環器疾患の重要な発症リスクとなることが明らかにされており,今やがんと循環器診療は長期にわたって切り離せないものになっている.
このような状況のなか,「Onco-Cardiology(腫瘍循環器)」という新たな学際領域が生まれ,欧米を中心に近年急速に体制整備が進められている.一方,わが国では,ようやくその重要性が認識され,萌芽的な取り組みが始まったばかりである.
抗がん薬による循環器系合併症の発症機序は,正確な発症頻度や危険因子を含めてそのほとんどが不明と言ってよく,このことが予測を困難にしている.個々の抗がん薬による循環器系副作用に関する臨床データの蓄積,心血管モニタリング法の開発や,多施設・多職種間の連携,教育システムの開発など,「腫瘍循環器病学」に求められる課題は多岐にわたる.本稿では,腫瘍循環器の現状と課題について概説し,その重要性について理解を深めたい.
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