FOCUS
onco-cardiology—腫瘍循環器学
赤澤 宏
1
1東京大学大学院医学系研究科循環器内科学
pp.1354-1357
発行日 2019年12月1日
Published Date 2019/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207828
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はじめに
がんの罹患率は年々増加を続けており,いまや男女ともに約2人に1人が一生のうちにがんと診断される時代である.一方で,がん治療は目覚ましい進歩を遂げ,がんは“不治の病”ではなく治療と回復が十分に可能な病気となりつつあり,その結果がんサバイバーが急速に増加している.また,がん化学療法や放射線治療による心血管合併症が,がん患者やがんサバイバーの生命予後やQOL(quality of life)を左右する大きな要因となっており,心血管合併症に対する専門的な対応を必要とするケースが増えている.がん治療による心血管系への影響は多岐にわたり,心機能障害・心不全,冠動脈疾患,心臓弁膜症,不整脈,高血圧,血栓塞栓症,末梢動脈疾患,肺高血圧症など,ほぼ全ての循環器疾患の発症あるいは悪化要因となりうる(図1)1).
このような状況のなか,がんと循環器の両者が重なった領域を扱う新しい臨床研究分野としての腫瘍循環器学(onco-cardiology)が提唱され,国内外で大きな注目を集めている.がん診療科と循環器科,さらに看護師や薬剤師,放射線技師など多職種が連携・協働して,有効ながん治療の継続のための心血管リスクの管理や心血管合併症への対応,さらにがんサバイバーの心血管モニタリングや予防的介入を行う(図2)2).
そこで本稿では,がん治療によって起こりえる循環器疾患を疾患別に解説する.
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