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はじめに
先天性心疾患(CHD)は生産児の約1%にみられ,そのうち約3分の1が新生児期・乳児期に積極的治療介入が必要とされる.小児循環器領域の外科的内科的治療と管理の進歩とともに,CHD患者の95%が成人期に到達する時代となり,小児のCHD患者に加えて成人先天性心疾患(ACHD)患者は年々増加し,現在国内には50万人近いACHD患者が存在すると予想される.小児CHD患者の病態と治療成績に影響する重要な因子の一つが肺高血圧(PH)である.一方,ACHD患者も,様々な心血管系合併症(心不全,不整脈,PH,血栓塞栓症)の問題を抱えるが,死亡率に寄与する危険因子の一つがやはりPHであり1),どの年齢においてもCHD患者ではPHの病態を正しく診断し治療方針を考えることが大切である.
実際にCHDに伴うPH(CHD-PH)の診療に当たる際には,患者の年齢は病態の理解や治療戦略を考えるうえで重要である.同時に,CHD患者のもつ内因的特性も考えておく必要がある.すなわち,CHD-PHの病態の中心は短絡疾患における肺動脈性肺高血圧(PAH)であるが,なかには肺動脈の発育が十分でない例(例:ファロー四徴症関連疾患術後),区域で発生の異なる肺内血管〔主要大動脈肺動脈側副動脈(MAPCA)〕を伴う例,気道や肺実質疾患を合併する例(例:気管狭窄,肺低形成),左心系疾患を合併する例〔例:僧帽弁狭窄(MS),左室流出路狭窄(LVOTS),大動脈縮窄(CoA)合併,心室機能低下〕などがあり,これらがPHの病態を修飾する可能性があることを忘れてはならない.さらに,成人期では,膠原病,血栓塞栓症,高血圧などの存在にも留意する.
以上のように,CHD-PHの診療では,年齢的要因に加えてPHを来すあらゆる原因が併存しうる可能性に注意して,臨床分類と重症度判定を進めることが肝要である.本稿では,大きく小児期と成人期に分けてその治療戦略を述べる.
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