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特集 Acute Aortic Syndrome—最新の話題と今後の展望
スタンフォードA型急性大動脈解離に対する外科治療の進歩
Clinical Trend in Surgical Strategy for Type A Acute Aortic Dissection
秦 光賢
1
,
折目 由紀彦
1
,
秋山 謙次
1
Mitsumasa Hata
1
,
Yukihiko Orime
1
,
Kenji Akiyama
1
1日本大学病院循環器病センター心臓血管外科
1Department of Cardiovascular Surgery, Nihon University Hospital
pp.445-449
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205952
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はじめに
スタンフォードA型急性大動脈解離は,発症すると1時間ごとに1〜2%致死率が上昇し,迅速な診断と治療が生命予後を左右する.適切なプライマリケアのもと緊急手術を行わなければ,病院到着前死亡を合わせると90%以上が24時間以内に死亡する1).
一部A型解離において,解離腔が発症早期に血栓閉塞する偽腔閉塞型解離に対する治療方針は未だ議論の尽きないところであり,欧米では内科治療の成績は不良で緊急手術を勧める報告が主流であるが2),本邦では初期には内科治療を推奨する施設が多い3).日本循環器学会のガイドラインでは,偽腔閉塞型でも大動脈弁逆流(AR),急性心筋梗塞(AMI)や心タンポナーデの合併,上行大動脈径50mm以上の場合は手術を考慮するとされる1).しかし,筆者の経験からは多くの症例で多少なりともARや心囊内血腫を認めており,また大動脈径50mm以下の症例は極めて稀である.偽腔閉塞型を慢性期に手術した場合,心囊内血腫や強い炎症のため高度な癒着が生じており,手術が困難になりがちである.国際多施設共同登録試験(IRAD)のデータでは,内科治療による死亡率は発症から24時間で20%,48時間で30%,1週間で40%,1カ月で50%とされるのに対し,外科治療では24時間で10%,48時間で30%とその死亡率は有意に改善されている4).自験例においても,合併症のないA型急性大動脈解離偽腔閉塞型の緊急手術死亡率はゼロであり,たとえ偽腔閉塞型でも確定診断後の緊急手術が最も救命率向上につながると信じている5).
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