Japanese
English
特集 Acute Aortic Syndrome—最新の話題と今後の展望
急性大動脈解離の診断と治療方針の決定
Diagnosis and Treatment of Acute Aortic Dissection
吉野 秀朗
1
Hideaki Yoshino
1
1杏林大学医学部内科学Ⅱ(循環器内科)
1Division of Cardiology, Department of Internal Medicine Ⅱ, Kyorin University School of Medicine
pp.435-443
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205951
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はじめに
急性大動脈解離(acute aortic dissection;AAD)の治療は,緊急性を要するため,迅速かつ正確な診断が必要である.また,選択すべき治療が,内科治療であったり,外科治療であったり大動脈解離のタイプによって異なる.AADを疑う症状から如何にして正確な診断に至り治療法を決定していくか,その流れを本稿では解説する.
AADは,「大動脈壁が中膜のレベルで二層に剥離し,血管走行に沿ってある長さで二腔になった状態」であり,偽腔に血流もしくは血腫が存在する病態であると定義されており1),3大致死性循環器系疾患(急性心筋梗塞,急性肺動脈血栓塞栓症,AAD)の一つである.これら3大疾患の診断と治療には,いずれも迅速性が要求されるが,AADにおいては,適応例に対して緊急手術が成功すれば,その予後は良好であり,診断が遅れれば,心タンポナーデや大動脈破裂など破滅的な予後をたどる.急性A型解離では,急性心筋梗塞,急性肺動脈血栓塞栓症と異なり,内科医が行う血管内治療や内科的治療のみでは良好な救命率が得られず,心臓血管外科,麻酔科を含めた緊急外科治療チームが必要である.また,必ずしも典型的な胸痛症状で来院するとは限らず,しばしばショック例や失神例にも遭遇する.疑いを持ち,後に述べる緊急胸腹部CT(単純および造影CT)などの確定診断法を適応のある症例にいかに迅速に行うか,診断した症例を最も適切な診療チームにいかに迅速に渡すかが,救命の決め手となる.
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