書評
—酒井文和,上甲 剛,野間恵之 編集—特発性肺線維症の画像診断—蜂巣肺,IPF/UIP画像診断の理解のために
喜舎場 朝雄
1
1沖縄県立中部病院呼吸器内科
pp.1233
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205870
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この程,「特発性肺線維症の画像診断」がメディカル・サイエンス・インターナショナル社から発刊された.臨床・画像・病理のそれぞれの視点で現在の国際ガイドラインのポイントと課題を浮き彫りにしている.また,それぞれの章で優先順位の高い鑑別疾患との相違点を丁寧に解説している.
大事なポイントとして,まず肺線維症の診断における蜂巣肺の意義と問題点を提起している.定義はあるものの最近の本邦からの報告にもあったように,蜂巣肺の判断はびまん性肺疾患を専門とする胸部放射線科医師の間でも一致率は低い事がわかった.本書では,これまでの国際ガイドラインで全く触れられなかった特発性肺線維症の病理所見からの出発点である小葉辺縁からはじまる線維化,比較的狭い範囲での正常・網状影・すりガラス陰影・濃厚陰影などの多彩な所見が見られるいわゆる時間・空間的不均一さをいかに捉えるかが重要であり,次回のガイドライン改訂へ反映させるべきと提言している.これは臨床医および胸部放射線科医に対して蜂巣肺の有無だけにとらわれる事の限界と疾患の発症・進展プロセスの理解がより正確な診断に結びつく事を示唆している.
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