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はじめに
医学用語には一般に大きく分けて2つのグループがある.一つは見たままの所見を表わす用語と,もう一つは背景の病理を強く意識し,診断に直結する用語である.筆者は前者を色のない用語,後者を色の付いた用語と区別して考えている.一例を挙げると,肺腺癌でみられるスピキュラ(spicula)は最終診断を肺癌とする場合には用いてよいが,結核の結節や,じん肺結節で結節の周辺が不整の場合にはこの色の付いたスピキュラ(spicula)は用いずにそのまま辺縁の不整な結節があると記述することにしている.
画像診断のレポートは一つの論文なので,所見は結果で考察を経て,結論を導く.したがって,もし結論である診断に自信のない場合は,この色のない所見でレポートは構成される.
“蜂巣肺”の場合はもちろん色の付いた用語である.しかしながら,胸部の画像診断の長い歴史のなかでは,中枢気管支の気管支拡張が進んだ場合の所見を表して“蜂の巣状”という表現が用いられたこともあり,画像診断医のなかにも見たままの所見,つまり色の付いていない用語としてこの“蜂巣肺”を用いるむきもある.そうすると,例えば肺気腫症例に肺炎や心不全が重なっても,見た目蜂の巣状であるという意味で蜂巣肺という用語が用いられることになり,混乱の一つの要因となる.したがってわれわれは,“蜂巣肺”は慢性型の間質性肺炎のうち進行する線維化病巣の非可逆的終末像を示す所見と厳しく限定して用いることにしている.
ただし,欧米の教科書を見ても日本の用語集を見てもその定義は極めてあいまいである1,2).そこでかつてわれわれは自ら定義を試みている3).これは先に述べた肺気腫に心不全の重なった症例や,結核をはじめとする炎症後瘢痕組織にみられる囊胞を区別することを意識して定義したものである.
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