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あとがき
小室 一成
pp.1130
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205851
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全身に多彩な症状を示す膠原病においては,心臓・血管においても様々な異常を示すことが昔から知られている.全身性エリテマトーデス(SLE)のLibman-Sacks心内膜炎,抗リン脂質抗体症候群の弁膜症,高安病やベーチェット病の血管病変は有名であるが,治療法の進歩により最近もっとも注目されているのは,肺高血圧症であろう.特に混合性結合組織病,強皮症,SLE,シェーグレン症候群ではその合併頻度が高く,生命予後に関係するだけに,肺高血圧症はこれらの膠原病において重要な合併症である.膠原病に伴う肺高血圧症は,左心疾患に伴う肺高血圧症や間質性肺疾患に伴う肺高血圧症など,肺動脈性でない肺高血圧症が混じっていることもあり,突発性肺動脈性肺高血圧症よりも治療に抵抗性であり,予後が不良である.当科の研究によると,強皮症に合併する肺高血圧症は従来の報告よりも高率であり,より早期の診断・治療が重要である.膠原病の患者の診療においては,心エコーなどでスクリーニングを行い,疑わしい場合は,早期に右心カテーテルにより,診断を確定すべきである.診断がついた場合には,早期より複数の薬剤を投与するが,顕著な効果が認められない患者もおり,その場合は,肺移植も考慮すべきである.分子標的薬の登場により,一部の膠原病の予後は改善しているが,このように膠原病に伴う肺高血圧症の治療も大きく変化し,予後も改善している.本特集により,膠原病に伴う循環器疾患診療の一層の発展を期待したい.
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