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あとがき
小室 一成
pp.500
発行日 2014年5月15日
Published Date 2014/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102487
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今回の特集テーマは「利尿薬をめぐる諸問題」である.症状のある心不全患者の治療において,現在でも利尿薬は必要であるが,いくつもの課題が解決されないまま使用されてきたとも言える.慢性心不全のなかで昔は弁膜症の比率が高かったが,弁膜症の治療といえば,ループ利尿薬とジギタリス製剤というのが定番であった.両薬剤とも生命予後を改善する効果がないことがわかり,現在ではその使用は少なくなったものの,NYHA Ⅱ度以上の自覚症状のある心不全患者には,依然として利尿薬の投与が推奨されている.利尿薬のなかには,ループ利尿薬ばかりでなく,サイアザイド系利尿薬やミネラロコルチコイド受容体拮抗薬,ナトリウム利尿ペプチド,さらには最近出たバソプレシン受容体拮抗薬などがあるが,果たして生命予後において真に有用なものは何であろうか.またこれらの利尿薬をどのように使い分けたらよいのであろうか.ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬においては,生命予後の改善効果が証明されているが,それ以外の利尿薬にはそのようなエビデンスはなく,使用する際にも考慮が必要であろう.このように利尿薬に注目が集まっている一番の理由は,バソプレシン受容体拮抗薬の登場であろう.これは,従来のナトリウム利尿薬と異なり,水のみの排出を促進することから,他の利尿薬とは異なる効果が期待される.わが国発のバソプレシン受容体拮抗薬が,従来の利尿薬には抵抗性の患者や低ナトリウム血症の患者ばかりでなく,心不全患者全般にも有用であるのか,今後のエビデンスの蓄積を待ちたい.
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