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あとがき
小室 一成
pp.1082
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102355
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本号の特集テーマは,「心臓病における核医学検査の進歩」である.私は,心不全の発症機序について研究をしてきた.心不全の原因疾患としては,虚血性心疾患,高血圧,弁膜症,心筋症が4大疾患である.高血圧や弁膜症は無論のこと,心筋症でも心重量は増加している.また陳旧性心筋梗塞の心臓では,梗塞部は線維化により菲薄化しているが,反対側の壁は肥厚している.つまり心不全の発症前には,どの疾患においても心肥大が形成されているのである.心肥大は,圧負荷,容量負荷といった機械的負荷に対して,壁ストレスを低下させるための代償機序として形成されるものであり,通常収縮機能は正常である.しかしこの時点ですでに,遺伝子発現は胎児化し,代謝は脂肪酸から糖代謝に変換し,交感神経活性も幾分亢進しているといわれている.「心不全は,代償機序である心肥大が破綻すると発症する」という概念が提唱されたのは,はるか数十年前であるが,その破綻する機序は何であろうか.これがまさに心不全発症の分子機序であり,未だに大きな謎なのである.このような心不全の発症機序をヒトにおいて,解明できるのではないかと期待されるのが,核医学検査である.脂肪酸代謝から糖代謝に変換しただけでは,収縮機能は低下しない.そこに何が加わると機能低下が始まるのか.交感神経活性の亢進は,本当に心肥大時にすでに始まっているのであろうか.心肥大と心不全の間には,いったい何があるのであろうか.「心臓病における核医学検査の進歩」がこの謎を解いてくれることを期待したい.
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