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あとがき
小室 一成
pp.1122
発行日 2014年11月15日
Published Date 2014/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200042
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よくカンファランスをしていると,この冠動脈病変には,カテーテルによる冠動脈形成術(PCI)がよいか,外科的バイパス術(CABG)がよいかといった議論が起こる.明らかにどちらがよいと決定できる病変もあるが,迷う病変も多い.迷う理由は種々あるが,そのなかに,術者の腕がある.PCIもむろん高度な技術が必要であるが,CABGとなるとなおさらである.したがって,冠動脈治療などは,大規模臨床試験から得られたエビデンスをそのまま応用しにくい分野といえよう.しかしいつまでも各術者次第では,医学の発展は望めない.医学がartである面を持つことは否定しないが,他者に引き継ぐことができてはじめて,その技術は科学となる.われわれは,artを科学し,より客観的な技術にしていく努力をすべきである.いつまでも一部の人しかできない,神技を必要とするような技術ではなく,誰でもができる手術法を開発し,システムを構築することが重要であろう.そのような意味で,今回の特集である「CABGを科学する」は,極めてart色の強いCABGを科学的に検証し,より良い手術法を考えた,まさに技術を磨く職人の知識の伝道であり,目指すべき方向を示している.良質の心臓外科医は,日常手術をしながらも,科学を行っていたのだ.循環器内科医も科学をしなければいけない.
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