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あとがき
福田 恵一
pp.908
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205793
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未病という言葉が最近よく使われるようになった.病気になる手前の段階とでも言うべき状態であろう.多くの疫学研究,動脈硬化モデルの研究から高脂(コレステロール)血症(脂質異常症)が動脈硬化性疾患の原因であることが示され,治療法が模索されてきた.スタチン系薬剤の登場前は脂質異常症の有効な治療法はなかったが,現在では一部の症例を除き脂質異常症はかなり治療法が発達し,心血管疾患の2次予防および動脈硬化性疾患を未病の段階で進行を予防することができるようになった.現在ではスタチン系薬剤を投与した場合,動脈硬化性疾患の死亡率を最大30%程度までは減少させることができるようになった.本特集号では,スタチン投与後にさらにどのような点に着目し,どうした治療を施すべきかを専門家の先生方に解説してもらった.
この特集号の原稿を読みながら,脂質異常症治療の残された課題がこんなにもあるのかということに驚かされたが,同時にこれらの問題はその本質が理解されれば時間の問題で解決されるであろうと予感させるものであった.今後は脂質異常症の1次予防に対し,どの程度まで介入を進めることが妥当なのかという問題であろう.限られた医療資源・財政のなか,脂質異常症治療にだけ予算を掛けるわけにはいかないのも事実である.高血圧,脂質異常症,糖尿病などの生活習慣病の1次予防は確かに有用かつ重要であるが,治療の範囲をどこまで拡げるか,財政的な問題もあり,社会全体での議論も必要であろう.脂質異常症の治療に難渋していた時代を振り返ると隔世の感があり,悦ばしいことである.
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