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あとがき
福田 恵一
pp.292
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102440
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私が大学を卒業した1983年頃の不整脈診療は心電図の読影が中心であった.標準12誘導心電図を頼りに不整脈の心電図を読影する作業は難解であることもあり,苦手とする者が多かった.この30年の間に不整脈診療を巡る環境は著しく進化した.大手製薬メーカーによる各種抗不整脈薬の相次いだ開発競走,プログラム電気刺激法による不整脈の誘発と電位マッピングが発展し,不整脈診療は抗不整脈薬の使用方法が話題の中心となった.さらに,各種イオンチャネルの遺伝子クローニングにより,抗不整脈薬も新たな分類(シシリアン・ガンビット)が提起されるようになった.ブルガダ症候群をはじめとした新たな遺伝性不整脈の発見,ICDとCRT-Dの開発,遺伝性不整脈と原因イオンチャネル異常の発見など様々な研究の発展があった.しかし,最も大きな変化は不整脈に対するカテーテルアブレーション法の開発であろう.アブレーションの発達と適応拡大により,循環器領域のなかで不整脈診療を志す若手医師の数がこのところ鰻登りに増えている.特に心房細動のアブレーションが登場してからは,対象症例数が一気に増えたこともあり,この傾向は顕著になりつつある.このことは日本の不整脈診療の向上に繋がるものであり,慶ぶべきことではある.本誌の特集にあるように,カテーテルアブレーションは日進月歩に発展している.しかし,ここで立ち止まって再考しなければならないのは厳密な適応と,合併症の予防と対処法への習熟であろう.本誌を編集しながら,初学者にはアブレーションが合併症を起こしうる手技であることを忘れず,研鑽を積んで欲しいと思った次第である.
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