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あとがき
福田 恵一
pp.890
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102313
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虚血性心疾患を多く扱う循環器医にとって,同じくアテローム性動脈硬化症を基盤として発症する末梢動脈疾患(PAD)は日常的に遭遇する疾患となってきた.間欠性跛行を呈するようなPADでは三枝病変などの重症な冠動脈病変を伴うことが多く,治療に難渋することもしばしばである.冠動脈ステントの使用に熟達してきた循環器医にとってPADによる動脈狭窄性病変の治療は一見容易そうにみえる.冠動脈治療に比して,不整脈や心タンポナーデなどを引き起こすこともなく,治療する動脈の直径もそこそこの太さがあり,血管だけ診ていると難しそうには見えない.しかし,昔から『餅は餅屋』と言われるように,その道の素人が治療すると思わぬ失敗をすることがあるものである.四肢,特に下肢の動脈には心臓の血管にはない『関節の屈曲』や『正座による圧迫』があり,ステントが物理的に外部から圧排されたりすることを充分理解しておく必要がある.また,ステント以外にも外科的治療法があり,その適応と利点・欠点を十分把握する必要がある.冠動脈疾患とPADでは共通するのは血管の狭窄病変であるという部分だけであり,診断方法も重症度判定も治療手技も冠動脈疾患とは大いに異なることを理解しなければならない.本特集は近年循環器医が手を付けだしたPADに関する治療を行ううえで,理解しておかなければならない点を簡潔明瞭に特集できており,時宜を得たものと言うことができるであろう.循環器内科医にとってPADに対する治療を行う場合には,『別の領域を一から勉強する』心づもりで行うことが重要であろう.
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