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あとがき
福田 恵一
pp.320
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205930
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心電図はすべての循環器病診断の基本である.しかし,実際には教科書的に判りやすい心電図ばかりではなく,判読が困難なものも少なからずある.私も初学者の頃,慶應病院の心機能室の心電図を毎週300枚ぐらい読影していて困った心電図が数多くあった.双方向性頻拍(bidirectional tachycardia)の心電図に出くわした際には何とも困り,先輩に助けを求めたのを良く覚えている.今から思えば,家族性QT延長症候群7型(Andersen Tawil症候群)に良く認められるもので,周期性四肢麻痺と奇形,心電図のU波,双方向性頻拍を有する疾患である.これ以外にも心房解離やジギタリス中毒,低K血症など頭を悩ませた若き日を今では懐かしく思い出す.今回の特集では,『故きを温ねて新しきを知る』という意味で心電図の特集を行った.今の若い世代の先生方は様々な診断モダリティを学ぶ必要があり,心エコー,ドプラを初めとした種々の計測法,心臓CT,心臓MRI,心臓核医学などどの一つをとっても奥が深いものを勉強しなければならない.このため,研修医や循環器内科の初学者にカンファランスや回診で心電図のことを聞いても,答えられないことがしばしばである.これは一つには若手医師が一般市中病院で初期臨床研修をするため,多忙な中で系統だった教育が為されないためでもあり,もう一つにはわれわれシニア世代が若手医師教育に十分に教育の時間を使うことができないということでもあり,反省せねばならない.こうした意味も含め,今回の特集を企画した.読者諸氏には初心に戻って本書を読んで頂きたい.必ず役に立つものが含まれていると思っている.
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