- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回,特集の企画を東京医科歯科大学難治疾患研究所分子病態分野の木村彰方先生にお願いした.先生はこれまで,様々な心血管系の疾患とゲノムとの関連を研究されてきたがそのなかでも心筋症についての研究では多くの業績をあげられている.特に肥大型心筋症については日本でのトップランナーということでご依頼し,必要な項目の作成から著者まで企画していただいた.肥大型心筋症は,突然死や心不全の症状が顕性化して初めて診断されるケースが多かったが,心電図や心エコーの発達により診断されるようになり,無症状の症例も数多くあることが分かった.遺伝子変異が原因であることが知られ,種々の検索が行われた.現時点では,単一の変異ではなく多くの種類の遺伝子が関与していることが明らかにされつつある.肥大型心筋症に基づく症状に対しても薬物療法だけでなく,非薬物療法と選択肢が広がっている.ただ,その適応について予後を考慮してどのように選択するかは今後の検討が必要である.知られているように肥大型心筋症の予後不良の機転は,不整脈と心不全である.心房細動は血行動態を悪化させる一因であり,また心室細動は突然死に至ることから避けるべき不整脈である.不整脈の薬効を調べたり,発症の原因検索に,iPS細胞を用いたモデルが有用であるかもしれない.心不全については,通常の治療を注意深く行うことしか今は道がない.移植も視野に治療が必要となるかもしれない.しかし,心筋不全の機序が明らかにされれば,再生医療への道が広がるかもしれない.本特集は,これまでの肥大型心筋症の研究,臨床のUp Dateをしてくれるとともに,次世代に行うべき展開についても考えさせてくれる興味深い内容で,企画者の木村先生にお礼申し上げるとともに皆様にも是非ご一読いただきたいものである.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.