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あとがき
平山 篤志
pp.1158
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101838
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東日本大震災の未曾有の大災害に遭われた皆様に,心からお見舞いを,また,犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表します.その大震災から7カ月が経過して,被災地ではようやく復興の兆しを知らせる明るいニュースが届くようになってきました.少しでも早く被災地の方々の平穏な日常が戻ってくることを祈念します.
さて,今回の「呼吸と循環」の特集は,三重大学の今中恭子先生がテネイシンCを取り上げてくださった.テネイシンCが冠動脈形成術後に障害部位に一時的に発現する,あるいは動脈硬化巣に発現されることは知っていたが,心筋梗塞後や心筋炎,あるいは拡張型心筋症などの心筋リモデリングに関与することやテネイシンC以外にオステオポンチン,ガレクチンなどの細胞外マトリックスを形成するmatricellular蛋白があることは私自身にとっては,新鮮な知識だった.心筋でも,血管でも組織が何らかの原因で傷害を受けた後に発現するmatricellular蛋白が互いに治癒過程を調節する.この調節が望む方向,すなわち生体にとって良い方向に向かえばよいが,一筋縄ではいかないようである.心筋梗塞などの心臓にとって震災のような災害を如何に克服するかをこれらの調節因子が担っていると考えると,東日本大震災後の復興は,単に東北だけの問題でなく日本全体の問題で,テネイシンCなどに始まる修復過程の調節を上手くすることがこれから先の日本の大きな運命を左右すると思われる.くれぐれも調節因子の発現の順番を間違わないように一人一人が考えたいものである.
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