--------------------
あとがき
平山 篤志
pp.1212
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101381
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の特集はマルファン症候群である.フランス人の医師 Antoine Marfanが,1896年パリの医学会で,5歳のGabrielleという骨格に異常を有する女子について報告した症例から名付けられた.マルファン症候群は,遺伝性の結合組織疾患で,常染色体優性遺伝をすることは知識として持っていても,われわれ循環器医師が出会う多くの症例は,大動脈解離を来して緊急手術を必要とする場合であった.しかし,本特集で記載されているように,整形外科,眼科にわたる疾患であることから総合的に管理し,予防する体制が必要である.遺伝子診断を含め早期に診断し,これまでのβ遮断薬による治療からTNFβを抑制するACE阻害薬やARBの治療を開始することで心血管系の合併症を予防することが可能となった現在,東京大学で行われているような横断的な診療体制が必要であることを知らされた.
このような,横断的な診療体制は何も特殊な疾患だけとは限らない.最近,注目されるようになった心・腎連関においても,動脈硬化疾患の原因としての糖尿病にしても,生活習慣病といった点からみればすべて関連する分野である.しかし,臓器別診療に基づく専門医制度はそれぞれの臓器において他領域との間に大きな壁を作りつつある.糖尿病や腎疾患が心血管イベントでなくなることを考えれば,マルファン症候群と同じように領域を超えた診療が必要で,専門性を特徴とする病院ほど,横断的な診療体制が構築される必要があるように思われ,以前のナンバー内科であった時代の方が横断的であったかもしれない.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.