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今月の特集は「心血管治療としての心臓リハビリテーション」である.心筋梗塞後の心臓リハビリテーションは,ずいぶん以前から有効性が海外では示されていた.しかし,わが国ではごく少数の施設で行われていたものの,広く普及することはなかった.その大きな理由は,急性心筋梗塞の院内死亡率が25%と極めて高く,二次予防より目前の救命に治療の目標がおかれ,循環器医師が忙殺されていたためである.急性期にステントを用いたインターベンションで確実な再灌流が行われるようになり,死亡率が5%程度になると,インターベンションで得られる短期的な効果より長期の予後改善,二次予防のための治療としての薬物療法,さらには薬物やインターベンションでは得ることのできない精神的な改善を含むリハビリテーションの有用性が広く認識されるようになった.しかし,医療も経済活動である以上,採算性が問題で,施設認定や専門の指導医,技師が必要となればリハビリテーションを積極的に行うことによる損失が問題であった.
ところが,リハビリテーションに対する認識が大きく変わりつつある.保険制度の改革によって,採算性が取れるようになったこともあるが,さらにチーム医療としてのリハビリテーションの,薬物療法を凌駕する予後改善の有効性,そして重症心不全患者のQOL改善の著明な効果が広く認識されるようになったことで,コメディカルを含めた患者さんと接している人達に有用性が広く認識されたことが背景にある.本特集でもプラークの安定化だけではなく,心不全治療としてのリハビリテーションについて詳細に述べられている.また,運動処方や具体的なリハビリテーションチームの立ち上げ方といった実践的な内容も含まれ充実した内容となっている.本特集が読者の参考になれば幸いである.
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