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旧聞に属するが,昨年のAHAで急性冠症候群に対するezetimibを検討したIMPROVE-IT試験が報告された.大規模臨床試験がことごとくnegativeとなる状況が続く昨今で,久しぶりの良い結果であった.のみならず,前年に米国ガイドラインが提唱した,いわゆるfire and forgetの脂質治療戦略に対して,従来からのlower is betterを支持する結果であり,ガイドラインの再改定をも迫るものとして受け止められ,学会会場は熱気にあふれていた.とは言うものの,18,000例を超える多数症例を集めてようやく得られた有意差がp=0.016であった.今の時代,新しい治療法の有用性を示すことがいかに大変であるかを改めて感じさせるものでもあった.
さらに昔の話になるが,私が医師になった30年前は,ちょうど急性心筋梗塞に対する再灌流療法の黎明期で,“急性心筋梗塞に対する再灌流療法は是か非か”“再灌流療法には血栓溶解療法とPCI(当時はPTCA)か”といった非常に“解り易い”テーマが盛んに議論されていた.当時は教科書に“急性心筋梗塞に対する冠動脈造影検査は禁忌”と書かれている時代であったが,本邦における再灌流療法のパイオニアである広島市民病院の佐藤光先生(たこつぼ心筋症の発見者)のもと,多くの急性心筋梗塞と血栓溶解療法(当時は冠動脈内投与を行っていた)を診させていただいた.当時は何も知識のない(これは今もあまり変わらない)卒後1年目の研修医であった私にも,再灌流療法の有効性(すごさ)を肌身で実感することができた.卒後3年目に佐藤先生より誘われて広島市民病院に戻り,以後24年間,今から振り返ってもかなりハードな生活を続けてきたが,このような臨床での感動が原動力になったように思う.
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