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心臓移植
肥大型心筋症(HCM)においては,突然死が最も危惧される有害事象の一つである.しかし近年,一次予防としての植込み型除細動器(ICD)の普及により,心不全の進行と心不全死がHCMの自然予後を規定する重要な因子となってきている1).最大限の内科的治療に抵抗性の心不全に対する最終的な治療手段は心臓移植であり,心臓移植の良好な治療成績が報告されている2).しかし,心臓移植の適応疾患の主流は拡張型心筋症(DCM)や虚血性心筋症(ICM)であり,HCMに限定した心臓移植の治療成績の報告は少なく,HCMで心臓移植を受けた患者の臨床的背景や移植後の成績などに関するデータは未だ不足している.また,HCMと診断される患者のうち,何%の患者で心臓移植が必要になるのか,あるいはどのようなリスクを持った患者に心臓移植が必要となるのかなど,不明な点も多い.
HCMに対する心臓移植は,左室流出路狭窄がないにもかかわらず最大限の内科的治療を行っても重症心不全の状態(NYHA分類Ⅲ〜Ⅳ度)から脱し得ない患者が適応になる3).図1に欧州心臓病学会のガイドライン4)で提唱された治療のアルゴリズムを示す.欧米においては,HCMは心臓移植待機患者,または心臓移植患者全体の1〜7%を占めると言われている5).心臓移植適応となるHCM患者は,青年期および成人ではいわゆるHCMの終末像である左室径の拡大と左室収縮障害を特徴とする拡張相HCM(dHCM)のものが多く,特に若年患者では病状の進行が速いのが特徴である6).幼児期では重度の心筋肥大と狭小な左室腔を特徴とし,拡張障害が主体である非拡張相のHCMが多い7).そして全体の約5%の患者で重篤な心室性不整脈を認める5).一方,本邦においては1999年から2013年までに施行された185例の心臓移植のうちdHCMが22例(11.9%)であった8).非拡張相のHCMに対する心臓移植は現在のところわが国では報告されていない.欧米と比較して虚血性心筋症の割合が少ないのがわが国の心臓移植の特徴であり,dHCMの割合が欧米より高いのもそのためと思われる.HCM患者における心臓移植後の生存率は,拡張型心筋症患者のものと同等であり,虚血性心筋症患者のものより良好であることが報告されている(図2)5〜7).
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