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はじめに
この30年間に新たに得られた眼科領域の知見,そしてさらに新しく開発された治療法の進歩には目覚ましいものがある。そしてそれらは次の世代にもさらに発展した姿で引き継がれてゆくべきものである。新しい治療法の発展の裏には,その学術面を支えた基礎研究や臨床研究の進歩があったことがわかる。既成概念を打ち破るブレイクスルーがあり,そして人々の認識が一段と深まってさらに新しいアイデアが生まれる,ということの繰り返しの作業が不断に行われてきた。このような医学の流れをみることは,自分達と同じ時代を生きた世代の業績を眺めることでもあり,また将来の新たなブレイクスルーにもつながる。
臨床での問題が1つ1つ克服されていくためには,いうまでもなくまず臨床での問題が何であるのかを的確に見極める視点が必須であり,これには臨床眼科医の注意深い観察力が必要である。そのためには既存の知識をただ単に理解してそれだけに満足するのではなく,さらに次の課題を模索し続ける姿勢を持つことが重要である。そのような臨床の視点を持った研究者が,モチベーションとビジョンを持って次の段階の科学的な眼科学研究を推進する力となる。
人間は本来知的好奇心に満ちた動物である。これまで自分が知らなかったことを知ったり,誰も知らなかったことを自ら明らかにしたりすることに,人間は非常な感動と満足感を得るような本性を持ち合わせている。このような個人的な感動と満足感の追求が結果的に人類全体の利益につながることであれば,その研究業績が客観的に評価されることになる。資源の乏しい日本ではこれからも科学技術立国を目ざさなければならないという宿命がある。眼科領域でのブレイクスルーによって眼疾患へのわれわれの理解がさらに深まるような研究業績が,日本の眼科研究者によっても数多くなされることが期待される。
このような視点から,本特集では現在眼科の代表的サブスペシャリティ分野で,臨床とともに研究にも従事されている新進気鋭の研究者に,それぞれの専門領域から研究の面白さを解説していただくこととした。とりあえず本項では「ゲノムからみた眼疾患」という観点から代表的疾患に的を絞って総括的に述べてみる。筆者の能力と誌面の制約もありすべての疾患を網羅できず,いくつかの重要な分野は省かざるを得なかったことをお断りしつつも,一人でも多くの臨床眼科医の方々に眼研究の重要性を理解していただければと願っている。
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