- 文献概要
私は2009(平成21)年に東京慈恵会医科大学を卒業しました.2年次に神経生理学に魅せられ,3年次の研究室配属では神経生理学研究室にお世話になりました.神経生理学研究室では,主にパッチクランプ法について学び,ラットで海馬の細胞を対象に長期増強を観察したり,鎮静薬であるデクスメデトミジンによる青斑核への作用を調査したりしていました.当時,あまり麻酔科学については触れたことがなかったのですが,デクスメデトミジンにより青斑核の自発発火が消失する様子に感動し,麻酔の面白さや,意識というものに興味をもつようになりました.そのため,6年次も神経生理学研究室を選択し,そのときは疼痛と神経可塑性に関する実験にかかわりました.
私には医師というものは臨床能力も研究能力も高めるべきであるという持論があります.医師は目の前の患者を適切に診察し,正確な診断や評価に基づいて,的確な手技や方法により治療を行うべきです.そのためには確かな臨床能力を有している必要があります.また,臨床を一生懸命行っていると,いくら調べてもまだ明らかになっていないような疑問が浮かんでくるようになります.その臨床現場で沸き起こる疑問を解決するために研究を行う必要があります.そういった疑問を1つひとつ解決することで臨床能力もさらに上がります.すなわち,臨床能力,研究能力が高い医師に見えている世界と臨床能力や研究能力が未熟な若手医師に見えている世界には隔たりがあるのだと思います.もちろん,臨床能力や研究能力は独占するのではなく,教育によって若手医師の臨床能力や研究能力を高める支援もするべきです.
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