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緒言
血液は血漿中に血球が浮遊している懸濁液suspen-sionであり,血球のvolume fractionであるhematocrit(Ht)の正常値は40〜45%である。いうまでもなく,生体内における赤血球の寿命は約4カ月であり,その間個々の赤血球は生きた細胞として機能を営んでいる。生体内で静止状態における赤血球はbiconcaveの円板状を呈し,直径は約7〜8μm,厚さは中央陥凹部が約1μm,その周りの最厚部は2.4μmぐらいである。しかしながら,血管内を高速で流れる場合の赤血球は,円板状から急激に変化して流線形,弾丸状となり,生理食塩液中ではコンペイト状を呈する。以上のごとく,赤血球の変形能deformabilityは大きく,内径8μm以下の微小血管や毛細血管の中を通過することも可能であり,この血液の特性は微小循環にとって大きな意義を有する。
血管内における血液の流動は,血液自体の流動特性と血管の力学的特性を基礎とするが,この血液の流動を研究するのが血液レオロジーである。赤血球は血球のsuspensionであるから,血液は非Newton性を有する。Scott Blair1)やCopleyら2)が提唱して以来,血液はCasson3)流動をなすと考えられ,また,血液粘度の測定には毛細血管粘度計よりも回転粘度計の方が好んで使用されてきた。その理由は毛細管粘度計では高ずり速度の流動特性しか測定できないが,回転粘度計では高ずり速度から低ずり速度まで測定できるからである。しかしこれらの血液レオロジーの結果は,すべて実験データであり,血管内を流れる血液の流動特性ではないということである。この点を合めて血液レオロジーを考えるべきである。
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