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講座
循環とレオロジー(Ⅱ)
Blood Circulation and Rheology (Ⅱ)
東 健彦
1
Takehiko Azuma
1
1信州大学医学部第1生理学教室
11st Department of Physiology, Shinshu University Medical School
pp.861-872
発行日 1969年10月15日
Published Date 1969/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202076
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Ⅲ.粘弾性
すでにのべたように,純粋に弾性のみ,あるいは粘性のみを示す物体は実在しないのであって,あらゆる物体は多かれ少なかれ弾性と粘性をかねそなえている。この両性質をひつくるめて粘弾性(viscoelasticity)と称する。たとえばチューインガムを冷水中で急にひきのばし,すぐはなすとほぼもとの長さまで縮む。これはゴム状の弾性を持つことを示す。しかしひきのばしたまましばらく保持していると,縮もうとする力は次第に消失し,放してものびたままで縮まなくなる。これは内部に流動がおこったためである。
粘弾性変形にさいしてみられる著明な現象として,応力緩和,クリープ,履歴現象等があげられる。上にあげたチューインガムめ例のように,物体に一定の変形を与えてそのままに保っておくと,時間の経過とともに応力が減少してゆく現象を応力緩和(stress relaxation)という。純弾性体ならこのようなことは当然おこらない。図15はイヌの大動脈幹部の各部分のタテ方向,円周(ヨコ)方向の条片に50%の伸展をおこなったときの応力緩和のおこり方のちがいを示したものであって,腸骨動脈より末梢ではヨコ方向の緩和が著明なのに対し,タテ方向ではほとんど緩和がおこっていないことがわかる。すなわち,ヨコ方向の変形に対してはタテ方向よりはるかに粘性要素の関与が大きいものと推定される。
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