Japanese
English
特集 冠不全
冠循環のレオロジー
Rheology in coronary circulation
重広 世紀子
1
Sekiko Shigehiro
1
1北里大学医学部内科
1Dept. of Int. Med., Kitasato Univ.
pp.849-854
発行日 1976年10月15日
Published Date 1976/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202960
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I.レオロジーとは
1920年頃,アメリカの物理学者Binghamはペイント,粘土ペースト,印刷インキなどの流動性の検討から,一般に物質の変形や流動に関する科学の重要性を唱え,ギリシャ語の"流れる"という語rheoに由来し,rheologyと命名した。弾性力学や流体力学が,物体の変形や運動に重点をおいているのに対して,レオロジーは物質の構造との関係を重視し,したがって物性論的性格が強くでている。生物レオロジーと呼ばれる分野では,生物体にみられるレオロジー的現象や生物体を構成する物質のレオロジー的性質を問題にし,具体例をあげると,血液の流動性,赤血球の変形,血管の変形,原形質流動,ウニの卵の変形,リンパ液,関節液,脳脊髄液,子宮頸管粘液,気管支分泌物,筋肉,心臓,膀胱,その他の軟組織骨などのレオロジー,タンパク,核酸の溶液のレオロジーなどがある。血液の循環の理論には力学的な側面が一つの支配をなし,従来からのいわゆる血行力学hemodynamics的な取り扱いが多くなされてきたが,レオロジーではこれとやや視点をかえて,血液の粘性ことにその非Newton流体性と粘弾性に注目する点に特徴があるように思われる。
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