巻頭言
末梢循環とレオロジー
橋本 義雄
1
1名古屋大学医学部第一外科
pp.919
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201834
- 有料閲覧
- 文献概要
現在,外科手術は患者にとってはもはや安全なものになった。ただ,われわれは患者をして手術に対し最も安全な状態にすることが大切である。そのために近時,術前,術中,術後の管理ということが多方面から検討されている。外科と環境という点からみると,私どもが日常試みているものとして低体温法,低血圧法,人為冬眠法,体外循環法,それに最近問題になってきた高圧酸素法などがある。これらいろいろな環境における末梢循環ということを考えると,そこには多くの課題が提供されてくる。まず末梢循環という言葉については人々によってかなりその見解を異にしているところがある。ふつう病理学的には末梢循環というと心臓性循環障害と対照して,動静脈およびリンパ管を主座とする体液の循環障害を意味するので,その包含するところはきわめて広く,すなわち大動脈以下,あるいは少なくとも筋性動脈以下が末梢循環にあたることになる。そして循環系の最も末梢は微小循環microcirculationであり,この部は循環系が組織細胞と代謝的に接触する機能部位ないし効果部位である(飯島)。このようなことから,わが国でも脈管の臓器特異性,微小循環など末梢循環の病態生理はいろいろな角度から検討され,急速にその成果があげられている。しかしこの領域にはなお多くの未解決な問題が山積している。
われわれも心臓血管外科の立場から,これら末梢循環障害について注目してきた。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.