Japanese
English
特集 睡眠呼吸障害
睡眠時無呼吸症候群の疫学と予後
Epidemiology and prognosis of sleep apnea syndromes
岡田 保
1,2
,
粥川 裕平
2
,
太田 龍朗
2
,
勝又 一夫
3
Tamotsu Okada
1,2
,
Yuhei Kayukawa
2
,
Tatsuro Ohta
2
,
Kazuo Katsumata
3
1名古屋大学医療技術短期大学部
2名古屋大学医学部精神医学教室
3勝又病院
1College of Medical Technology Nagoya University
2Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
3Katsumata Hospital
pp.39-43
発行日 1989年1月15日
Published Date 1989/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205398
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はじめに
睡眠時の呼吸障害は,ASDC (睡眠障害センター協会)の分類17)によれば,睡眠時無呼吸症候群(SAS)と肺胞低換気症候群に二大別されている。
現在までのところ疫学の対象となっているのは,睡眠時無呼吸症候群に関するものに限られているので,以下の記述にも肺胞低換気症候群についてはふれていない。
睡眠時無呼吸症候群とは,睡眠時に換気が10秒以上くり返し停止し,そのため睡眠経過が障害されるとともに,低酸素血症,高炭酸ガス血症や呼吸性アシドーシスをきたす結果生ずる症候群である。その臨床症状としては,昼間過眠(傾眠症)または不眠が多数の症例に認められるが,慢性化した場合には,高血圧症,右心不全,肺胞低換気などの呼吸,循環系の障害を招来し,あるいは知的能力の障害,抑うつと不安,性格変化,行動異常などの精神神経科領域の問題を伴うことがある。
本症候群は,この10余年の間に次第に注目され,北米においては睡眠障害クリニックの充実とともに,その発現頻度の著しいことが指摘され,アメリカ合衆国においては,200万人以上の患者の存在が推定されているが,その基礎となる系統的な疫学調査はなお不充分である。本邦における有病率はまだ明らかにされていない。本稿では数カ国で行われた有病率の調査結果とわれわれが内科系患者を対象にして調査した結果1〜3)とを中心に報告する。なお,SASは乳幼児期にも発症するが,本稿では,成人のみを対象とする。
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