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緒言
心仕事量,心筋酸素消費量および冠血流量の間の関係はよく知られている1)。心筋収縮性は心筋酸素消費量と冠血管抵抗の重要な決定因子である2.3)。その逆の関係,すなわち冠血流量が心筋収縮性を決定するということは冠血流量が減少した時にはよく知られているが,心筋酸素消費量が冠血流の誠少したとき,単位仕事量に対して減少するかどうかについては充分に解明されていない。Gregg4,5)は実験的に犬の左冠動脈回旋枝をカニューレにて灌流し,この左冠動脈回旋枝の灌流圧を増減させて冠血流量の増減が心筋酸素消費量に及ぼす影響について検討した。冠灌流圧の増減に伴い、冠血流量と心筋酸素消費量は同一方向に増減した。この時心拍数,心拍出量,大動脈圧および左心室拡張末期圧は一貫した変化を示さなかった。この観察は冠血流量または冠灌流圧が心筋の酸素消費量または心筋の収縮性に対して独立した決定因子であることを示唆している。このことは種々の実験6〜9)によっても検討された。これらの実験の結果は,各々の実験で心仕事量の制御が完全には行われておらず、心仕事量が冠灌流の増減により変動し,この変動が心筋酸素消費量の変動を引き起こすために合致していない。本研究では冠血流を減少させたとき,心仕事量が一定であると、左心室酸素消費量はいかに変動するかについて犬摘出交叉灌流心臓標本を用いて検討した。すなわち摘出交叉灌流心臓標本の左心室に薄膜バルーンを挿入し,このバルーン内に水を満たしこのバルーンをサーボシステムを使用して制御して左心室の容積を制御した。異なった容量において左心室を各々等容収縮させて左心室収縮期圧-容積面積を求めた。この圧-容積面積を左心室の仕事量の一つの良い示標と考えて、これと酸素消費量の関係に対して冠血流量の減少が及ぼす影響について検討し,さらに各々の条件下にて左心室のカテコラミン摂取量を測定して冠血流量の減少が及ぼす影響の機序についても検討を加えた。
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