Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
虚血やハイポキシアにより心筋のpHが低下することはよく知られており1,2),その要因としてATPの加水分解3)やlactateの生成4)が関与している5,6)。一方,心筋が虚血に陥るとカテコールアミンが放出され7〜9),β—受容体を介して心筋のグリコーゲン分解を促進したり10),細胞内へのCa2+流入を促して収縮を増強したりして虚血傷害を増悪させていると言われており11),虚血によるpH低下にも虚血時に放出されるカテコールアミンが関与する可能性が考えられる。事実β—遮断薬は虚血時のpH低下を軽減する12〜16)。
しかしβ—遮断薬が虚血時のpH低下を軽減することを示したAbikoらの実験12〜14)はまるごとの動物を用いて行われているので,β—遮断薬の血行動態に及ぼす作用や虚血部への血流再配分作用17)の関与を無視できないし,そのような問題点を除去するためモルモット摘出心灌流標本に31P-NMR装置を導入して心筋細胞内pHを測定し,propranolol 1 mg/Lを虚血前に作用させることによって虚血時のpH低下が軽減されるのを見いだしたPieperら15)の実験では,前投与したpropranololの量が多いし心機能に対する作用が考慮されていない。同様の標本と装置を用いてpH低下に対するd—体と1—体のpropranololの作用を検討した我々の実験16)でも,pH低下の抑制は心筋抑制作用の考えにくい比較的低い濃度の1—体で見られ,且つ1—体>d—体であってβ—遮断作用の重要性が示唆されはしたがd—体にも充分に作用はあるという結果でβ—遮断作用が本当に重要であると明確に結論することはできなかった。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.