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カテコールアミン類は心筋の収縮性を増強するが,この作用が主としてβ—アドレノセプターを介して起こることはよく知られている。哺乳類の心筋細胞膜を用いた放射性リガンドの結合実験においても心筋のβ—アドレノセプターの存在を示した報告は数多くみられる。一方,α—アドレノセプターがある種の哺乳類において,心筋収縮力増強に関与しているという実験結果が最近数多く報告されている。まず,おもにα—アドレノセプターに作用するフェニレフリンがラットの心室筋標本やモルモットの心房筋において,比較的低濃度で陽性変力作用を示し,これがβ—アンタゴニストでは抑制されずα—アンタゴニストで抑制されることが報告された1,2)。さらに,α—アドレノセプターに選択性の高いα—アゴニストであるメトキサミンもラットの左心房3),ネコの乳頭筋4),イヌの心筋5)において陽性変力作用を示し,これらの作用はフェントラミンによって抑制されることが報告された。摘出ウサギ乳頭筋における実験では,フェニレフリンのα作用に対するフェントラミンによる拮抗の薬理学的性状はArunlakshana and Schildによって競合的拮抗の有無を判定するために提唱された基準を満たしていることも明確に示された6,7)。これらの実験では,α—アゴニストであるメトキサミン,クロニジン,ナファゾリンなどはそれ自身で弱い陽性変力作用を示し,一方,フェニレフリンのα—アドレノセプターを介する陽性変力作用に競合的に拮抗した。Ariensに従えば,このような作用はこれらの薬物が"partial agonists"として振る舞うということで説明し得る8)。すなわち,レセプターに結合はするが"intrinsic activity"の低いアゴニストは,"competitive dualism in action"(それらのアゴニストが結合するレセプターを介する作用の有無によって増強作用も拮抗作用も示し得る)を示す。乙れらの薬理学的実験における結果は,心筋にα—受容体が存在することを強く示唆している。
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