Japanese
English
特集 心不全をめぐる新しい展開
心不全,肥大心の心筋代謝
Myocardial metabolism in failing and hypertrophied hearts
矢崎 義雄
1
Yoshio Yazaki
1
1東京大学医学部第三内科
1The 3rd Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.243-250
発行日 1987年3月15日
Published Date 1987/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205018
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はじめに
心臓に圧負荷が加わると,心筋は肥大を形成して収縮単位を増加させ,心機能を保持するように代償する。この肥大した心筋の収縮力学的な特性については従来から,肥大の早期より収縮速度を中心とした心筋固有の収縮性はすでに低下しており,慢性期に至るとその収縮力の低下がさらに増大して,心不全の病態を形成するに至ると述べられている。したがって,ポンプ機能としての心機能は負荷に対して心筋の肥大の形成により代償されるが,心筋細胞内の代謝は早期より障害されていると考えられていた。ところが最近,肥大心筋の熱力学的な検討から,収縮性は低下するも,収縮エネルギーの変換効率はむしろ改善され,負荷によるエネルギー需要量の増加に対して代謝的に代償する機能が働いていることが示されるようになった。それではこのような心筋の負荷に対する代謝的な適応現象はどのような機序で出現するのであろうか。その検討には,心筋の収縮力学的特性とエネルギー代謝について生化学的に十分理解することが必要である。
そこでまず心筋の収縮機構について簡単に説明し,心筋の収縮力がどのような生化学的な機序で調節されているかを解説する。そして負荷に対する心筋の反応様式を明らかにして,その適応と破綻の病態を心筋代謝に関する知見に基づいて考察し,心不全の発症機序についても,分子生理学的なアプローチから解析を試みる。
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