Japanese
English
特集 心筋の肥大・拡張
心筋肥大の発生機序
Mechanisms of myocardial hypertrophy
小室 一成
,
矢崎 義雄
Issei Komuro
,
Yoshio Yazaki
pp.695-702
発行日 1987年7月15日
Published Date 1987/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205083
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はじめに
絶えず収縮をくり返して血液を駆出している心筋は,その形態も機能もけっして一定の定常状態にとどまることはなく,常に動的な平衡状態にある。個体発生の過程,あるいはホルモンなどの体液性因子や,血行動態の変化に対応して,心筋は肥大を形成しながら心機能を保持するように適応していく。心筋におけるこのような適応現象は,周囲の環境の情報を細胞内の代謝に伝達する生化学的な機序を解明するモデルとして,循環器病学ばかりでなく,医学,生物学の広い分野から注目されている。そして最近の進展の著しい細胞遺伝子工学に基づいた,心筋の生化学的特性に関する分子生物学的なアプローチにより,その課題も徐々に解明されようとしている。
そこで本稿では,まず心肥大の形成を細胞レベルから捉えてその概念を説明し,次いで心筋肥大の生化学的機序の基本となる蛋白合成の調節機構について遺伝子レベルから解説を加え,さらに負荷が心筋細胞のどのような情報伝達系に従って蛋白代謝に伝えられ,最終的に肥大が形成されるか,我々の成績を含めた最近の知見を紹介しながら考察し,心筋肥大の生化学的機序についての現況を述べたい。
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