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はじめに
1946年,Parcell,Blockらによって相前後して発見された核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;NMR)現象を流速測定に最初に利用したのはSuryan1)であった。Suryanはガラス管上にコイルを巻き.管内に縦緩和時間(T1)値)の短い(50〜100 msec)塩化第二鉄溶液を流し,そのNMR信号強度が流速に比例することを観測した。1959年,Singer2)はNMRによる血流測定を提案し,翌年にはマウスの尾における測定結果を報告した。つづいて1970年,Morskeら3)は人体の腕の静脈での血流測定を試みた。先のSuryanの方法は血液のようなT1値の長い流体の流速を求めるには不適当であったため,Singerは装置に工夫を加えた。それは主磁場に腕を挿入させて手や前腕の中の血液中のプロン***を分極させておき,次いで,間隔をあけた発振用と受信用の2つのコイルを用いる方法(いわゆるtwo coils method)である。すなわち,流れの上流側に発振コイルを置き,これに高周波パルスを加え、その部分を通るプロトンに共鳴させてプロトンの磁化を反転させる。下流側の受信コイル域に到達した瞬間,このプロトン群の信号は逆転するので,パルス発振から逆転した信号受信時までの時間と,2つのコイルの距離から流速を求めた。しかし,この方法で流速を正確に求めるには血液のT1値をあらかじめ知っておく必要があるが,そのT1値には個体差や病態による差があるため,in vivoでそれを知るのは困難である。そこで,正確なT1値がわからなくても流速を測定できる方法が試みられている4,5)。このような方法は腕や足を対象として血管内の平均流速を求める方法であるが,他の方法—電磁血流計,超音波ドップラー法など—の発展の陰に隠されてしまい,臨床的な応用は遅れている。
1972年に登場したX線CTの画像診断分野に与えた影響は大きく,翌年にはLauterburによってX線CTの画像再構成法を利用したNMR断層撮影が提案された。以来,Mansfield,Hinshawらを初めとしてNMRの画像化の研究が開始された。1980年に人体の頭頸部断層写真が発表されたのを契機にNMR映像法(Magnetic Resonance Imaging:MRI)は目覚ましく発展し,最近では人体の鮮明な断層像が得られるようになった。
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