Japanese
English
Bedside Teaching
冠動脈内血栓溶解療法の長期予後
Intracoronary thrombolysis
神原 啓文
1
,
河合 忠一
1
Hirofumi Kambara
1
,
Chuichi Kawai
1
1京都大学医学部第三内科
1The Third Division, Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Kyoto University
pp.413-417
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204854
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急性心筋梗塞に対する治療は,梗塞発症後の合併症に対する治療であったが,1970年代に至り積極的な梗塞サイズの縮小を目的とする治療が行われるようになり,各種の生理学的に有効と考えられる手段あるいは薬剤が工夫された。それらの多くは姑息的なもので急性心筋梗塞の死亡率を低下し,合併症を減少させる有効な方法として確立するまでには至らなかった。
ところで急性心筋梗塞の発症機転としての冠動脈血栓の役割については多くの議論が行われてきた。1980年Dewoodら1)は発症6時間以内の急性梗塞例に冠動脈造影法を実施し,80%以上の例で冠血栓によると考えられる閉塞を認め,しかも時間の経過と共に開通率が高くなることを確認するに及び,冠動脈血栓の重要性は動かしがたいものとなった。また急性期の冠動脈造影が決して危険でないことも実証された。1979年Rentropら2)はstrepto-kinase (SK)を冠動脈内に直接注入(IC-SK)することにより冠動脈血栓の溶解に成功した。それ以後多数の研究者による成績が追加され,IC-SKによる冠動脈血栓溶解の有効性が確立きれた。また本邦においても著者らを中心としてわが国で利用可能なurokinaseの冠動脈内注入(IC-UK)を用いた全国の共同研究を開始し,IC-SKと同様に有効であることを報告した3)。しかもIC-SKよりも出血などの合併症が少ないということも明らかにされた4)。この間,動物実験において梗塞責任冠動脈を再開通すれば梗塞部心筋がより多く生存し得ることが報告され,早期の冠動脈血流再開が梗塞サイズの縮小に有効であることを裏づけた。
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