Japanese
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綜説
冠動脈疾患における血栓溶解療法—抗凝固薬,抗血小板薬,血栓溶解薬
Coronary Thrombolysis in Patients with Acute Myocardial Infarction
神原 啓文
1
,
不藤 哲郎
2
,
小野 晋司
3
Hirofumi Kambara
1
,
Tetsuro Fudo
2
,
Shinji Ono
3
1京都大学医療技術短期大学部
2武田病院循環器内科
3京都大学医学部第三内科
1College of Medical Technology, Kyoto University
2Department of Cardiology, Takeda Hospital
3Third Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Kyoto University
pp.537-547
発行日 1992年6月15日
Published Date 1992/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900485
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血栓溶解療法
1,心筋梗塞における血栓の役割
急性貫壁性心筋梗塞ではアンギオグラフィー上90〜95%の症例に血栓によると思われる閉塞がみられ1),これは血管内視鏡的2)や病理学的所見3)とも一致するものである.一方,非貫壁性心筋梗塞では,20〜40%に血栓が存在するとする報告が多いが,90%以上という報告もある.いずれにしても心筋梗塞では血小板の凝集に引き続く血液成分の凝固,血栓形成が重要な役割を演じており,その対策が必要である.薬剤により冠動脈血栓が溶解すると,どの程度の心筋サルベージが可能であろうか.心筋梗塞の組織傷害や壊死の大きさは,虚血の程度とその持続時間に大きく影響される.
心筋虚血による障害は“wave-front”的に心外膜側より内膜側に時間経過と共に進行する.イヌ・モデルでは冠動脈閉塞40分後には内膜側に壊死が生じ,3時間後には外膜に達する貫壁性の壊死となり,再開通による心筋の救済領域は壊死周辺部に限られる.ヒトにおいて許容時間がどの程度かは明らかでないが6時間程度ではないかと推測されている4).したがって,できるだけ早期に閉塞血管を再開通することが心筋を壊死より救済し,ひいては予後の改善をもたらすと考えられる.
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