今月の主題 透析と血漿交換
総説
人工腎臓の現状と将来
前田 貞亮
1
Teiryo MAEDA
1
1関東労災病院
pp.1441-1451
発行日 1987年11月15日
Published Date 1987/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913506
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はじめに一概念と歴史
「尿毒症」30年前までは,それは死の宣告に等しい言葉であったが,今日では,人工腎臓をはじめとする種々の治療法,いわゆる血液浄化法によって,きわめてよく改善しうる一つの臨床症候群としてとらえられるようになった.
腎機能低下→腎機能不全→腎不全→尿毒症という一連の病名ないし症候名は,病態生理としての腎機能低下ないし腎不全と,臨床症状を主とする尿毒症とに区別されるべきである.腎不全が高度になり,貧血,アシドーシス,心不全,噯気,嘔吐,頭痛,不眠などの中毒性臨床症状が出現したのが尿毒症であるから,確かに腎不全のさらに進んだ状態ではあるが,疾患としての腎不全は,形態学的および病態生理学的状態は変わらないけれども,血液浄化法による治療を行うことで臨床症状は消失し,一般健康人の生活状態とほぼ同じ程度のレベルに回復する.このことから,腎不全と尿毒症とは別の概念と考えるほうが正しい.
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