特集 右心と左心
巻頭言
右心と左心
広沢 弘七郎
1
1東京女子医科大学
pp.295
発行日 1975年4月15日
Published Date 1975/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202742
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今から20年近く前,女子医大の心研の初期に経験した剖検例が未だに忘れられない。
28歳の女性,典型的な僧帽弁口狭窄症であった。冬を目の前にした十月の初診で,早く手術をとすすめたが,小学校の先生で,すぐ休みたくないという。来年3月までというのを説得して,二学期一ぱいで休業入院ということにした。その12月を待たずに,その患者は急患としてかつぎ込まれて来た。お定りの,そして心配していた肺炎である。強い呼吸困難でチアノーゼもあったと思う。入院数日,II,III,aVFのSTの著しい上昇を伴って激しい狭心症状をおこし,間もなくなくなってしまった。剖検で僧帽弁口狭窄と気管支肺炎は臨床診断通りであった。それに加えて,左室の後壁が全層かつ広汎に著しい軟化をおこしていた。激しい狭心症状とII,III,aVFのST上昇と正に後壁硬塞そのものであった。剖検時,マクロで見た所では冠動脈に,特にこのような激しい変化を起こすような固有の病変はなさそうだという病理の説明であった。
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