特集 肺末梢領域の病像と病態
肺気腫肺の呼気力学
諏訪 紀夫
1
1自治医科大学病理学
pp.457-461
発行日 1981年5月15日
Published Date 1981/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203763
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肺気腫の閉塞性呼気障害は胸廓が肺を外部から圧迫する強制呼気を前提として発生するものである。したがって閉塞性呼気障害の発生に先立って,肺の自発的収縮力の低下があり,そのため通常の生活条件の下にもある限られた時間内に必要な呼気量を駆出できない状態が存在し,常時強制呼気が介入することがこの障害をおこす原因となるものと考えられる。この研究は剖検肺についての組織計測的所見を組込んだ力学的モデルをつくり,これによって肺気腫肺の呼気能率の低下とその要因を説明することを目的とする。
肺の自発的収縮は肺の弾性系の応力によるものであるから,まず肺弾性系の歪みと応力の関係を与える関数形を定める必要がある。私共は実測に基づいて図1の如くF=A (eax−1) (1)という関数を用いた。この式でFは応力,Xは弛緩時の弾性系の長さをloとし,それがlの長さにまで伸張された時,(l-lo)/lo=Xで定義される歪み,Aは弾性系の量と単位のとり方によって定まる定数,αは弾性系の物理学的特性を示す定数(弾性定数)である。
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