巻頭言
ARDSの治療について
沼田 克雄
1
1自治医科大学麻酔科
pp.107
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203152
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Shock lungをはじめとする所謂adult respiratorydistress syndrome (ARDS)が注目されてきたのはそれほど目新しいことではない。にも拘らず,その治療は現在なお困難を極めることが多い。確かに治療手段としてのレスピレーターは有用であり,特にPEEPはPao2を上昇させる上にきわめて効果的である。しかし,次第に肺コンプライアンスが低下し,レスピレーターで無理に加圧している中に肺のある局所は換気が非常にわるいと同時に他の場所は過伸展のレ線像を示し,Pao2は徐々に下り,果ては上半身に著明な浮腫が出現してくるとなると,もはや治療は困窮を極める。この増悪には,感染や肝機能障害を合併するとますます拍車がかかる。かかる症例には,単にレスピレーターやPEEPのみではどうにもならないものがあることを痛感させられる。筆者は,症例を重ねている中に,患者救命の鍵は,感染防禦は勿論であるが,畢竟する所,栄養状態の改善をはじめとする,患者の全身的な生命力の賦活にかかっているとの印象を濃くするに至った。
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