今月の主題 酸塩基平衡の異常
臨床での酸塩基平衡異常
COLDとARDS
謝 宗安
1
Muneyasu Sha
1
1東京医科歯科大学医学部・麻酔学
pp.826-828
発行日 1984年5月10日
Published Date 1984/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219027
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COLD(chronic obstructlve lung disease;慢性閉塞性肺疾患)
慢性安定期 COLDは慢性呼吸性アシドーシス(以下Acd)をきたす代表的疾患群であり,肺気腫,慢性気管支炎を中心に気管支喘息の一部,汎発性細気管支炎が含まれる.
ガス交換異常は主に換気血流比の異常,すなわち血流に比べて肺胞換気量の減少は肺胞O2分圧の低下を,また血流の乏しい肺胞の増加は肺胞死腔の増加をもたらし,初期にはPaO2の低下のみ,つぎにはPaO2の低下とPacO2の上昇を示すようになる.慢性安定期ではPaCO2の上昇に対し,腎でのHCO3-の再吸収増加による代償が完了しており,その酸塩基平衡は図の慢性呼吸性Acdのsignificance band内に入る.このsignificance bandは慢性呼吸性Acdの臨床例や動物実験から採血し,多数の値から平均±2SEの95%信頼区間を求めたものである.HCO3-(BE),H+(pH),PCO2の組み合わせから諸家のグラフが発表されている.電解質はHCO3-の増加により,塩素が細胞内から細胞外へ移動し(クロライドシフト)尿中に排泄され,低塩素血症を呈することが多い.代謝性アルカローシス(以下Alk)の合併例では塩素投与によりPaCO2の改善をみることがある.
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