巻頭言
肺の代謝に関する研究面
螺良 英郎
1
1徳島大学医学部第3内科
pp.199
発行日 1974年3月15日
Published Date 1974/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202598
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肺という臓器の特異性からいってガス交換という肺の呼吸生理機能研究面が重要視されてきた。この本質論は今後も変りはないものといえるが,近年代謝臓器としての肺のもつ生化学的な研究面が抬頭しつつある。私も胸部疾患に興味を懐く一人として肺の代謝面での研究がこれからのこの分野での一課題になろうと予測してかれこれ2年前大阪大学からここ徳島大学への転任を機に,教室での研究テーマの一つに挙げた。幸い教室に脂質代謝についてこれまで研究を行ってきた安岡劯講師を迎えたのでじっくり肺の生化学的研究面を学んでゆく覚悟ができた。
肺の代謝に関する研究面としても範囲が広い。それは余りにも未知な未開拓な分野が多いということにもなるわけであるが,まず第1に取り挙げたのが燐脂質代謝に関する研究である。肺胞機能にとって重要な肺胞内面の表面張力低下に与る肺表面活性物質,surfactantは蛋白,糖を含む燐脂質を主成分とする物質であるが,この燐脂質でも表面活性作用の大きいdipalmitoyl-phosph—atidylcholine(DPL)が注目される。このDPLが肺のどの細胞で生合成され分泌され,その合成過程はどうであるか,そしてこのsurfactantのもつ肺疾患での役割りはどうであろうか等の問題がある。
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