Japanese
English
綜説
酸素運搬体としてのFluorocarbon Emulsion—(Ⅰ)物理的性状とガス運搬能について
Fluorocarbon Emulsion as the Transporter of Oxygen (Ⅰ) : Its Physical Properties and Capacity of Gas Transport
大柳 治正
1
,
関田 幹雄
1
,
弘中 敏雄
1
,
山下 修一
1
,
野木 佳男
1
,
松田 尨功
1
,
中谷 正史
1
,
戸嶋 和彦
1
,
光野 孝雄
1
Harumasa Oyanagi
1
,
Mikio Sekita
1
,
Toshio Hironaka
1
,
Shuichi Yamashita
1
,
Yoshio Nogi
1
,
Takanori Matsuda
1
,
Seishi Nakaya
1
,
Kazuhiko Toshima
1
,
Takao Mitsuno
1
1神戸大学医学部第1外科
11st Dept. of Surgery, Kobe Univ. School of Med.
pp.200-206
発行日 1974年3月15日
Published Date 1974/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202599
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輸血血液不足の現在,人工血液を求める研究は非常に多くあるが,まだ血液の主作用である酸素を運ぶ物質を見出しえないのが現状であり,ここに登場したのが酸素易溶物質であるfluorocarbon (FC)である。
1966年Clarkら1)はFCの一種であるFX 80を用い,1気圧酸素下で液体呼吸によりラットを生存させることに成功し,FCの酸素運搬体としての可能性を示した。さらに,Sloviterら2)はアルブミンで安定化したFC乳剤でラットの脳灌流に成功し,FC乳剤を"代用赤血球"と命名した。一方,動物の全血交換においてFCを人工血液として用いるかどうかの研究をしたのは,1968年のGeyerらのラットにおける報告3)が最初である。GeyerらはFC 43を界面活性剤で乳化し,ラットを全血交換し約8時間生存させえた。しかし,大動物ではClarkら4)がFC乳剤を静脈内に注入し,正常Hb存在下に混合静脈血の酸素分圧が短期間上昇することによりFC乳剤が輸血として使いうる可能性のあることを示唆したにすぎず,著者ら5)〜8)のイヌにおける約90%の交換輸血成功例が最初といえるだろう。
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