今月の主題 脳血管障害のトピックス
病態生理
代謝面
小暮 久也
1
,
飛田 宗重
1
Kyuya Kogure
1
,
Muneshige Tobita
1
1東北大学医学部付属脳疾患研究施設・神経内科部門
pp.1914-1915
発行日 1984年11月10日
Published Date 1984/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219284
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虚血性脳血管障害の病態
脳細胞は少量の細胞外液と血管壁とによって血流と隔てられているが,それら各分画の物理化学的特性は著しく異なっている.すなわち,脳細胞は細胞膜を隔てて代謝環境の著しく異なる分画に接しているため,大量のエネルギーを消費して細胞内環境(homeostasis)を維持している.そのエネルギー源は血流に依存しており,虚血性脳血管障害によって酸素やグルコースを供給する血流が杜絶すれば,脳はたちまち重大な代謝危機に直面する.まずCO2やLactateの蓄積によるacidosisが生じ,次いでATPの産生も低下しhomeostasisを保つことが不可能になる.血流が速やかに回復しない限り,組織は蛋白質水解酵素(hydritic protease)や脂肪分解酵素(lipase)の作用を受け細胞構築の崩壊が始まり,最終的には壊死に至る(表1)1).
しかし現実の脳血管障害においては虚血病巣は常に側副血行を伴って形成され,虚血中心部と病巣周辺部,さらに遠隔部とではそれぞれ血流も異なり,組織が障害される機序も一様ではない.
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