Japanese
English
ジュニアコース
肺胞拡散
Gaseous Diffusion in the Alveoli
太田 保世
1
Yasuyo Ohta
1
1慶応大学医学部内科学教室
1Dept. of Med., School of Med., Keio Univ.
pp.1131-1136
発行日 1973年12月15日
Published Date 1973/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202565
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"肺胞拡散"という題を頂載したが,まずはじめに,この言葉のもつ曖昧さを判然とさせる必要があろう。肺胞およびその近傍での"拡散"という現象には,いくつかのやや異質のものが存在する。第1には,換気運動によるmass flowとして呼吸細気管支あたりまで運搬された吸入気と,いわゆる肺胞気との間の拡散混合であり,第2は肺胞気と肺毛細管血との間の,肺胞膜,肺毛細管壁,赤血球膜などを介しての拡散である。前者は気相の中のガス拡散であり,吸入気側から肺胞気側への縦方向の拡散のほかに,肺胞間の拡散や肺胞の小孔を通しての拡散なども考慮されなければならない。後者はいわば組織中の拡散であり,たとえば肺拡散能力という指標に示されるごとく,これまでの呼吸生理学で主として問題とされてきた拡散である。
したがって,"肺胞拡散"については,それらのいずれかに的を絞って話を進める必要があるが,ここでは,編集者の意をうけて,気相のガス拡散を扱うこととする。しかし本誌では,この問題についてすでに横山博士の総説1),佐々木博士の論述2)3)があり,本号でも,大久保博士が気道内ガス拡散について述べられる予定なので,本稿が屋上屋を架することになり,その意味から若干趣を変えて,気相でのガス拡散を重視した場合の考え方などを中心として述べてみたい。
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