Japanese
English
綜説
肺胞におけるガス拡散の基礎と臨床
Basic and clinical aspects of alveolar gas diffusion.
岡村 輝彥
1
Teruhiko Okumura
1
1慶大医学部内科教室
1School of Medicine, Keio University.
pp.489-499
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200907
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I.はじめに
肺の機能は換気と肺循環及びこれらをつなぐガス交換とよりなる。この肺胞におけるガス交換が拡散なる物理的現象で行われることは周知である。臨床的に拡散障害が注目されたのは第一次欧州大戦中の毒ガスによる肺疾患,さらに1918〜22年のインフルエンザ大流行に際してであつて,Schjerning1)は本疾患初期にみられるチアノーゼは心肺の臨床所見が少く高濃度O2吸入が良い効果を与えることをみとめている。かくてBrauer2)は肺胞における拡散障害を一次的におこすと考えられる疾患群をPneumonoseと命名した。他方Hamman及びRich3)は呼吸困難及びチアノーゼを呈し,病理解剖学的には線維増殖により肺胞壁の肥厚を来す症例をAcute Diffuse Interstitial Fibrosis of the Lungsとして報告した。またBruce等4)はベリリウムを用いる工場労働者におこる肺肉芽症に拡散障害をみとめたが,我国でも上田等5)はその集団障害例を報告している。そして1951年Coumand等6)は上記の疾患やサルコイドーシス,いわゆる肺胞上皮癌等の如く肺胞膜の透過性の変化を示すと考えられる疾患群をAlveo—lar-Capillary Blockと総称した。
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