Japanese
English
講座
ヘモグロビンのkinetics(Ⅳ)魚類ヘモグロビンの呼吸機能—とくに比較生理の立場から
Kinetics of Hemoglobin(Ⅳ)Respiratory Function of Fish Hemoglobin
橋本 周久
1
Kanehisa Hashimoto
1
1東京大学農学部水産化学研究室
1Laboratory of Marine Biochemistry, Faculty of Agriculture, The University of Tokyo
pp.749-758
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202410
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
魚類の場合も,ヘモグロビン(Hb)の主な生理的機能は呼吸器官を通じて外界よりとり入れた酸素を体内の諸組織に運ぶことにあり,この点では高等動物のHbと何ら異なるところはない。しかし,魚類Hbの酸素親和度,Bohr効果などは魚種により著しく相違する。いうまでもなく,魚類は水界という特殊な環境に生息するが,その環境も,たとえば海水と淡水,暖海と寒海,酸素飽和度の高い水と必ずしも高くない水というふうに区々である。他方,生態的にみても洄游魚と非洄游魚,海水が淡水で一生を送るものと成長に応じて両水域を往来するものがあるなど,これまた様々である。そして魚類Hbの呼吸機能が概ねそれぞれの魚種の生活習性あるいは環境に適合するとみられるところから,これは一種の適応現象にほかならないのではないかとされている。
ところで,最近魚類のHbには著しい多成分系現象—同一個体中に多数のHb成分が共存する現象—のみられることが明らかにされている。サケ・マス類などではこの成分数は最高10数コにもおよぶ。さらにそれらの同一個体由来のHb成分相互間において呼吸機能が顕著に相違することが見出され,魚類Hbの呼吸機能上の特質が従来より明確な形でとられるようになった。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.