Japanese
English
講座
冠閉塞時の心筋酸素消費量—その主要規定因子:心筋張力と活動状態を中心に
Myocardial Oxygen Consumption during Coronary Occlusion:With Special Reference to Its Major Determinants: Myocardial Tension Development and Contractile State
渡辺 坦
1
Tan Watanabe
1
1財団法人心臓血管研究所
1The Cardiovascular Institute
pp.381-389
発行日 1971年5月15日
Published Date 1971/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202260
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
coronary care unit(C.C.U.)の発達に伴い,急性心筋梗塞の直接死因のうち,重篤な不整脈によるもの(electrical failure)はその予防,制御に近年著しい進歩がみられる。一方,power failureまたはpump failure殊に心原性shockは,今なお院内死亡の大半の原因となっており,また急性期を過ぎた心筋梗塞の少なからぬ例が,慢性あるいは潜在性の心不全により社会復帰を妨げられているのが現状である。
冠閉塞後,平常はその血管の灌流領域にある心筋組織が蘇生するか否かはその部に供給される酸素量とその部の酸素需要量の均衡によって左右され,かつpower failureの進展が梗塞の拡がりの程度と無関係ではない事実から,冠閉塞疾患の予後は大きくこの部の酸素需給関係に支配される。これまでの多くの研究の焦点が副血行路の生成,傷害部の組織学的,生化学的な特性,car—diac performance変化などに向けられているのは当然であるが,本稿では他の諸条件が不変の時,虚血心筋の酸素需要の増大は虚血領域の広さの拡大と壊死の程度を強め,その減少は逆の効果をもたらすとする前提に立って,全心および虚血部の心筋酸素消費量(MVO2)を規定する因子を考え,それらの因子が臨床的な急性心筋梗塞とその経過,治療に際し如何なる修飾を受けるかについて考察したい。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.