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講座
体内温度分布の消長からながめた人体の気候適応
Adaptation to Climat in Man from the Viewpoint of Changes in the Temperature Gradient in the Body
緒方 維弘
1
Korehiro Ogata
1
1熊本大学体質医学研究所生理学研究部
1Department of Physiology, Institute of Constitutional Medicine, Kumamoto University
pp.375-380
発行日 1971年5月15日
Published Date 1971/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202259
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はじめに
適応とは生体が環境の変化に対応して,それに合致した生活をいとなみうるような変化をおこすことをいう。そもそも生物は刺激に対応して反応することが調節機構の基本的な特性をなしている。この反応はその生物が棲息する環境の拡大にともなって,ますます複雑さを加えていくことは必定である。単に生物の刺激に対する反応という限りでは,それが形態学的であるか,あるいは生理学的なものであるかにかかわらず,刺激に対する直接的な応答を意味する。ところが刺激がすでに習慣している範囲を越し,かつそれが長くつづくと,極端な場合には既得している反応だけでは,それに対処することができなくなってしまう。そうするとその生物の官能の平衡は破れざるをえない。平衡が破れてしまうまでにいたらなくとも,その官能の活動が大なり小なり障害されるような事態は,浸襲刺激の程度に応じていろいろとおこりうるわけである。このような事態に対処して,生体にはその平衡を再建し,維持しようとする能力が賦与されている。これを生体の適応能という。かかる能力を駆使して,新しい刺激条件下で再び適正な反応を獲得した状態になることが適応である。適正な反応を獲得するためには関係器官の官能には変化がおこってくるし,また必要に応じてはその形態までもが変化してくる。
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