Japanese
English
総説
脳梗塞の発現と血液の役割
Hypercoagulability and Cerebral Infarction
松田 保
1
Tamotsu Matsuda
1
1金沢大学医学部第三内科
1Third Department of Internal Medicine, School of Medicine Kanazawa University
pp.317-327
発行日 1986年4月1日
Published Date 1986/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205685
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I.はじめに
最近の平均寿命の延びは著しく,おそらく現存の比較的大型の動物の中で,ヒトに匹敵するかまたはこれを上回る長寿を誇るものはわずかにカメの一種とゾウくらいのものであるらしい。しかし,このような寿命の延長とともに,悪性腫瘍と,脳および冠動脈の虚血性疾患が主要な死因としてクローズアップされつつある。このような場合,動脈の硬化を基盤として,血小板の粘着,凝集ならびにフィブリンの形成(血液の凝固)を生ずるのである。本来このような血小板の粘着,凝集や血液の凝固は,血管の破綻によって生ずる出血に対する防御機構であるが,動脈硬化に際してはかえって生体に不利に作用する。もちろん,このような血栓の形成に対する防御機序も生体には存在するのであるが,これは加齢によって生じた動脈硬化に基づく血栓の形成を阻止するほどには発達していない。
血栓症の危険因子としては,血管壁の異常,血流の速度または性質の異常,血液の異常の三要因がすでに19世紀よりVirchowによって指摘されているが,本稿では脳梗塞の発現について,この三要因のうち,血液の演ずる役割について総説的に述べることとする。
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